先進医療とは
医療保険やがん保険に「先進医療特約」という保障がセットされているのを目にしたことはあると思います。しかし、その保障内容やどんなときに役立つものなのかはあまりよく知られていないのではないでしょうか。
まずは「先進医療」とはどのようなものか、確認してみましょう。
先進医療は、厚生労働省が管轄をしており令和2年7月時点で80種類の治療法が認定されていて、費用は全額患者の自己負担となります。先進医療に該当する治療法は定期的に見直されるため、以前は治療法が100種類程ありましたが、先進医療の指定から外れるもの、通常の治療法(一般の保険診療)に移行しているもの等あります。
治療法は3つに分けられる
私たちが病院で治療を受けると、通常は治療費の3割(年齢によって2割や1割)を負担します。これを「一般の保険診療」と呼びます。
一方、がん治療を健康保険で認められていない抗がん剤などの治療を選択する場合には、「自由診療」といって全額を自己負担する方法もあります。この場合は、それまでの一般の保険診療の治療と混合が認められずに、かかる費用は全額自己負担となります。
そして、3つめの選択肢として「先進医療」というものがあります。先進医療の治療法は前述の通り80種類に限定されていて、その費用は全額自己負担となります。自由診療と異なり、一般の保険診療の治療と混合が認められていますので、費用が高額になるのは「先進医療」の部分となります。
「自由診療」と「先進医療」の区別がつきにくいですが、大まかな違いは以上のような点となります。
先進医療はどの病院でも受けられるわけではない
先進医療としての治療法は、厚生労働省が認可しなければその指定とならず、その治療を行える病院施設も指定されていて、それほど多くはありません。がん治療の最先端技術である陽子線・重粒子線治療を行える施設は、日本国内に陽子線治療18か所、重粒子線治療6か所となっています。特に東北地方などでは陽子線治療施設が1か所となっており、十分な数とは言えません。
先進医療にかかる技術料(治療費)
先進医療の技術料は重粒子線治療など、高額なもので300万円程がかかり全額自己負担となります。また、治療の入院施設が併設されていない場合等は数週間近隣のホテルに滞在しなければならず、交通費と合わせて別途数十万がかかる場合もあります。
民間生命保険の「先進医療特約」の比較
今は医療保険やがん保険に、先進医療を保障する特約がほとんど付いていると思います。保険料も一か月あたり数百円ですので、必要性を感じなくとも取り敢えず付けておこうという方がほとんどではないでしょうか。その「先進医療特約」について、どの保険会社も1000万円~2000万円までかかった技術料(治療)実費を支払うと規定しています。そのため技術料が300万円かかったとしても十分対応できます。
しかしながら、宿泊費や交通費までを実費保障する保険会社はそれほど多くありません。近年は技術料に加え、一時金で10万円程度給付する保険会社もありますが、その金額で不足がないか確認しておきましょう。
また、実際に治療を受ける際には技術料を前払いしなければいけない場合もあります。かかる技術料が300万円の場合、手元に資金が無ければ治療がスタートしないことになります。そのため、保険会社によっては治療施設とあらかじめ提携をしていて、治療を受ける際には、保険会社が直接技術料実費を支払う取決めをしている場合があります。
その場合は手元に資金が無くともスムーズに治療が受けられます。治療施設のホームページに提携保険会社を載せている場合もありますので、自分の加入している保険会社が含まれているか確認しておきましょう。
「多焦点眼内レンズを用いた白内障手術」について
白内障手術を受ける場合、保険適用手術では単焦点眼内レンズで一箇所にピントをあてるのが通常の治療法です。
これに対し、遠近両方にピントを合わせる多焦点眼内レンズを使用する手術が「先進医療」として指定され、これまで多くの治療が行われてきました。
しかしながら令和2年4月から、この「多焦点眼内レンズを用いた白内障手術」について、先進医療の指定から外れています。多焦点眼内レンズその物については自己負担となり、治療費については健康保険適用となっております。先進医療の指定のままであれば、医療保険の先進医療特約で全額給付されていた治療法でしたが、この4月からはそうではないということになります。
まとめ
今回は「先進医療」と「先進医療特約」に関してご紹介しました。
記事のポイントは以下になります。
- 病気やケガの治療の方法には、「一般の保険診療」「自由診療」「先進医療」の3つがある
- 「先進医療」に該当する治療法は定期的に見直される
- 事例が多かった「多焦点眼内レンズを用いた白内障手術」は令和2年4月以降適用外
- 生命保険会社の「先進医療特約」の内容によっては有利、不利があるので保障内容を確認しておく