現在、都市部では土地の価格が高騰しているため、土地を購入せずに建物だけを所有できる借地権付物件を選ぶケースが多くなりました。
フラット35は、様々な住宅取得のケースに対応しており、建設地が借地の場合は、普通借地権、定期借地権および建物譲渡特約付き借地権いずれの場合も一定の要件を満たせば借り入れ申し込みが可能です。
借地権付き物件は価格面でのメリットがある一方、ローン審査や契約条件に注意が必要です。購入を検討している場合は、事前に相談するのがおすすめです。
借地権付建物建物を購入するメリット
• 購入価格が安い
土地の所有権を購入しないため、物件価格が所有権付き物件よりも安くなる傾向があります。
初期費用を抑えられるため、資金計画が立てやすく、低予算で戸建てに住みたい人に向いています。
• 税金が軽減される
固定資産税や都市計画税は建物部分にのみ課税されるため、土地も所有する場合と比べて税負担が軽くなります。
• 長期利用が可能
普通借地権の場合、契約期間は最低30年で、更新すればさらに延長可能です。
地代を支払っていれば、地主からの更新拒否は原則として困難です。
• (地主側のメリット)相続税対策になる
地主にとっては、借地権を設定することで土地の相続税評価額が下がるため、節税効果があります。
• 建物の所有権は自分にある
土地は借りている状態でも、建物は自分の資産として所有できます。
借地権付建物の注意点
土地を購入する代わりに、土地を地権者から借りて住宅を建てることで、総費用を抑えることができる借地権ですが、住宅ローンの審査ハードルが高くなるため、注意しなければならないポイントがあります。
• ローン審査が厳しくなる
担保評価が低い
土地の所有権がないため、一般的に金融機関は慎重になります。
• 地主の承諾が必要
抵当権設定や譲渡には地主の承諾書(譲渡承諾書・抵当権設定承諾書など)が必要です。
• 契約内容の確認
借地契約の残存期間、更新の有無、登記状況などが審査対象になります。
• 登記されていない借地権は不利
登記済みの借地権の方が審査に通りやすいです
【フラット35】と借地権建物
担保(抵当権設定)
原則として敷地に住宅金融支援機構を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定していただきます。
ただし、抵当権設定について地主の承諾を得られない場合でも利用できることがあります。
※ 地主が申込みご本人の配偶者(内縁関係の方、婚約関係の方および同性パートナーの方を含みます。)または直系親族の場合には、敷地に抵当権を設定していただきます。
※ 敷地の権利が地上権の場合は、地上権に抵当権を設定していただきます。
地主に対して、書面により「賃借人との借地契約を解除する前に機構に連絡を行うことについて、地主の承諾が得られていること」が確認できる場合、取得住宅の敷地への抵当権設定および登記された賃借権への質権設定を行わずに「借地権取得費」を融資対象に含めることが可能です(2025年10月改正)。別途、住宅金融支援機構が定める要件がありますので、詳細はご相談ください
【借入期間】
① 普通借地権の場合
通常の返済期間と同じ
② 定期借地権の場合
返済期間の最終日が借地権の残存期間を経過する日以前の日
③ 建物譲渡特約付借地権の場合
・建物譲渡日が確定期限である場合
返済期間の最終日が建物譲渡日より前の日
・建物譲渡日が不確定期限である場合
返済期間の最終日が借地権設定日から30年(建物譲渡日が30年以上の期間経過後の不確定期限である場合は当該期間)を経過する日以前の日
④ 使用貸借の場合
通常の返済期間と同じ
【借入れの対象となる借地権取得費】
1.権利金
2.保証金
3.敷金
4.前払賃料
※ 借入額は借地権取得費と建設費の合計金額以内です。
※ 賃貸借契約書、地上権設定契約書などにより借地権取得費が上記1から4までであることおよび対価の支払いを確認できることが条件になります。
※ 保証金、敷金または前払賃料の場合は、敷地への担保設定に加え、原則として、これらの返還請求権に質権などを設定していただきます。
※ 借地権取得費が名義書換料及び承諾料の場合は、借入対象になりません。
借地権と底地売買
借地借家法10条では、土地に借地権を登記していなくても、その土地の上に借地権者名義の建物が登記されていれば、第三者がこの土地を取得しても借地権を主張できるとしています。
つまり、借地権者以外の名義で建物を登記すると、地主が変わった場合、新しい地主に借地権を主張できないおそれがあります。
地主は滅多に変わらないため、こうした状態で家を建てる人は少なくありませんが、最近では土地を底地売買専門業者に売却する地主も増えています。業者は法律に精通しているため、建物を借地権者名義で登記していないと、立ち退きを迫られることもあります。
借地権と抵当権
借地権付建物の場合、土地の所有者は地主なので、一般的には抵当権は建物にしか設定できません。
借地権者と建物の名義人が同じであれば、建物に抵当権を設定することで、借地権にも抵当権の効力が及びます。しかし、借地権者と建物の名義が異なると、建物に抵当権を設定しても借地権には抵当権の効力が及びません。担保評価は建物のみになります。
親の名義で借地権契約をしていて、同居する息子名義で家を建て替えるといった場合、親の年齢で住宅ローンを組むのは難しい場合があります。息子名義に借地契約を変更すると、借地権が贈与されたとみなされ、贈与税が問題になります。この場合は、借地契約を共同名義でするとか、建物の名義を共有にするとかして、借地権者と建物の名義人を一致させるしかありません。
地主の承諾書
借地権がいわゆる賃借権の場合、地代の支払いが滞ったりすると、賃貸借契約が解除されるおそれがありますし、借地上の建物を売却や転貸する場合、地主の承諾を得る必要があります。
借地権の敷地に建築する住宅にローンを組む場合、金融機関は、抵当権の実行(担保の売却)に備え、通常、地主の承諾書を取り受けています。承諾書には、具体的に「抵当権を実行、または任意処分して第三者が所有権を取得した場合は、引き続きその者に貸与する」「賃貸借契約を解除しようとするときはあらかじめ貴行に通知する」といった文言が入ります。
ただし、地上権の場合やマンションの場合、また、寺などが地主の場合には、承諾書の免除や文言の省略をする場合もあります。
確認を要する書類
- 底地の「登記簿勝本」
所有者(地主)および第三者の権利関係(抵当権の設定などがないこと)の確認
建物が建つ以前からある抵当権には、法定地上権を主張できません。法定地上権は、競売後に建物を存続させるための権利なので、これが主張できないとなると、抵当権が実行された場合、建物の所有者は、建物を撤去しなければいけなくなります。
もともと建物があった敷地について、後から土地だけに抵当権が設定された場合は法定地上権を主張できます。 - 実測図
借地契約との面積の整合性を確認します。 - 土地賃貸借契約書
借地面積、地主·借地人·地代·賃借期間等を確認します。
なお、借地権付建物を担保提供する際は、建物火災保険金請求権に質権設定されることがあります。借地権付建物の売買契約は、通常の不動産売買契約書と異なる点があるため、専門家に相談することが重要です。