親が所有する「農地(田や畑)」に子供世帯の住宅を建てたいという場合、住宅ローンを組むにあたって、何か問題はあるのでしょうか?
土地の名義や分筆など、検討すべきことはたくさんあります。また、市街化調整区域で農地を宅地に転用する(農転)許可申請には、住宅ローンの資金計画と、その裏付けとなる融資承認通知書が必要となるケースもあります。ここでは、フラット35の事前審査を上手に活用して農転手続きをスムーズに進める方法を解説します。
- 地目が農地のままでも事前審査可能
- 敷地が分筆前(計画段階)でも事前審査可能
- 市街化調整区域内でも融資可能
- スピーディーな事前審査
農地転用とは
農地の転用とは,「農地を農地以外にすること」であり、耕作の目的に供される土地をそれ以外の土地にする行為です。農地に区画形質の変更を加えて、住宅・工場・路等の用地にする場合のほか、区画形質の変更を加えない場合でも、資材置場等の農地を耕作の目的に供さない状態にする行為も農地の転用に該当します。住宅を建てる目的で農地を転⽤する場合は、転⽤しようとする農地の所在する市町村の農業委員会を経由して都道府県知事等に提出し、許可を受ける必要があります。
農地転用の手続き
農地を農地以外に転用する場合、下記手続きが必要です。
1. 市街化区域内の農地の場合は農地転用届出
2. 市街化区域外(市街化調整区域内及び都市計画区域外)の農地を農地以外に転用する場合は農地転用許可申請
1.と2.共に所有者自身が農地を農地以外に転用する場合は「農地法第4条」、所有者以外が農地を農地以外に転用する目的で権利の設定、移転をする場合は「農地法第5条」の規定による手続きとなります。
親名義のまま子供に土地を貸す場合
- 親名義の土地を子供が使用貸借し、その敷地に住宅を建設する場合でも、フラット35の融資対象となります。
- 土地の所有者は親なので、親が農地転用の手続きを行います。
- 使用貸借の場合、敷地については必ず地主(このケースは親)に担保提供していただき、住宅金融支援機構のために第1順位の抵当権を設定していただきます。
子供に農地を贈与する場合
- 子供が親から敷地の贈与を受け、子供名義で農転手続きを行います。
- 税制面で農地は評価が低いですが、子供が贈与を受け、農転した土地は市街地農地として評価されます。宅地に相当するの評価額になりますので、元々の農地としての固定資産税評価額よりかなり高く課税されます。
市街化調整区域
市街化調整区域内の住宅に対する住宅ローンについては、一般的な金融機関は積極的では無く、受付可能だとしても条件がありますので注意が必要です。
開発許可と農地転用
- 市街化調整区域内は建築が制限される地域なので、農業従事者でない一般の人が住宅を建てる場合は開発行為の許可が必要です。
- また、農地を宅地にするには、建物を建築するという目的が必要になります。したがって、市街化調整区域内の農地を宅地に転用したい場合、原則「開発許可」と「農地転用」の許可申請を併せて行う必要があります。
市街化調整区域と住宅ローン
- 担保物件として流通性があり転売できる物件か
- 第三者が再建築できる物件か
市街化調整区域内の場合は、開発許可がないと建物の建築もできないため、これらを確認しないと住宅ローンは検討できません。
開発許可や建築許可を受け、建築確認が済んでいれば法的には問題無いとしても、一般的な金融機関は「担保としての流通性(転売できる物件かどうか)」を確認します。
都市計画事業として開発された地域の宅地や、市街化区域に隣接する地域として許可されたものは、ほぼ市街化地域と同様の評価に見て問題無いと考えられます。しかし、市街化調整区域に建てられる住宅には、農業者従事者の「農家住宅」や「分家住宅」もあります。これらは建てられる人が限定され、再建築が簡単に行えないため、流通性は劣ります。
金融機関では、何を根拠に開発許可や建築許可が出たのかを確認し、流通性を勘案しながら判断することになります。
フラット35と市街化調整区域内の住宅
- フラット35の場合、適合証明書が発行され、住宅金融支援機構のために第1順位の抵当権の設定が可能であれば、市街化調整区域内でも借入れの対象になります。
- 市街化調整区域内に住む農家の方が「分家住宅」を建設する場合でも、融資対象としています。
- 市街化調整区域内の中古住宅を購入する場合も借入申込可能です。
農地転用の審査基準
農地法第4条・第5条許可を受けるためには、「立地基準」と「一般基準」の2つの基準を満たす必要があります。許可基準については、次のように定められています。
立地基準
申請に係る農地の営農条件および周辺の市街地化の状況から農地転用が出来得るかどうかを判断する基準です。具体的には、農用地区域内にある農地および集団的に存在する農地その他の良好な営農条件を備えている農地については、原則として許可することが出来ないこととする一方、市街地の区域または市街地化が見込まれる区域内にある農地については、転用を許可することが出来ることと定めています。
[原則不許可]
1.農用地区域内農地
2.甲種農地
3.第1種農地
[条件付許可]
4.第2種農地
[原則許可]
5.農業生産に影響の少ない第3種農地
(鉄道の駅が300m以内にあるなど、市街地の区域または市街化傾向が著しい区域にある農地
一般基準
土地の効率的な利用の確保という観点から転用が出来得るかどうかを判断する基準です。具体的には、農地を転用して申請内容通りの用途に使用することが確実と認められない場合、周辺の農地に支障を生じる恐れがあると認められる場合には、許可をすることが出来ないことと定めています。
この基準の判断材料に「事業実施の確実性」という項目があり、「転用行為を行うために必要な資力及び信用があること」の裏付け資料の添付が求められます。住宅ローンを利用して資金調達する場合は、融資の承認通知書が必要になります。
その際に、フラット35の事前承認通知書を有効活用することができます。
▼申請書面の例:出典 仙台市/農転申請 事業計画書概要 SAMPLE
「資力を証明する書類と一致させると共に写しを添付する。」という注意書きがあります。
フラット35は宅地でなくても事前審査可能
フラット35の申込
- フラット35の申し込みは、敷地の地目が田、畑、山林、雑種地など宅地以外の場合でも事前審査をすることができます。また、分筆・分割の計画段階でも申込可能です。
- 融資実行時までには敷地を宅地に変更登記する必要があります。